原価率が上がったとき、すぐ仕入先へ値下げを頼んだり、料理の量を減らしたりすると、お客様の満足度まで落としかねません。先に確認したいのは、何にいくら使い、どこで食材が減っているかです。
この記事では、考え方だけで終わらず、店内で最初に集める数字、実際の進め方、失敗しやすい点まで順番に整理します。すべてを一度に変える必要はありません。自店に当てはまる項目を一つ選び、変更前後を同じ条件で比べてください。
1. 最初に、仕入額ではなく売上原価を見る
当月の仕入額だけで原価率を出すと、まとめ買いをした月や在庫を使った月に数字が大きくぶれます。月初在庫に当月仕入を足し、月末在庫を引いた金額が、その月に使った食材の原価です。
棚卸しは面倒ですが、毎月同じ基準で数えるだけでも変化が見えます。高価な肉、魚、酒類から始め、慣れてから対象を広げる方法でも構いません。
ここで確認すること
- 月初在庫+当月仕入-月末在庫を確認する
- 税込・税抜を毎月そろえる
- 食材と飲料を分けて見る
2. 廃棄を理由別に記録する
廃棄を一つの数字にまとめると対策が決まりません。売れ残り、仕込み過多、期限切れ、調理ミス、食べ残しに分けて記録します。金額が難しければ、最初は品名と数量だけでも十分です。
売れ残りが多ければ仕込み量、期限切れが多ければ発注単位、食べ残しが多ければ量や付け合わせを見直します。原因ごとに打ち手が変わります。
3. 売れている料理と利益が出る料理を分ける
販売数が多くても、手間と原価がかかりすぎる料理は利益を残しません。商品ごとに販売価格から食材原価を引き、1皿で残る粗利益を確認します。
人気があり利益も出る料理は目立つ位置へ。人気はあるが利益が薄い料理は価格、量、セット内容を見直します。売れず利益も薄い料理は、仕込み負担まで含めて継続を判断します。
4. 原価を下げる順番
一度に全部変えると、どの対策が効いたのか分かりません。金額への影響が大きい食材を3つだけ選び、翌月も同じ数え方で比べます。
ここで確認すること
- 棚卸しで実際の原価を出す
- 廃棄の多い品目を特定する
- レシピと盛り付け量をそろえる
- 発注点と発注単位を決める
- メニューの価格と構成を見直す
- 翌月も同じ方法で測る
飲食店での具体例
月商300万円の店で、鶏肉の廃棄から確認する例
全食材を調べず、仕入額が大きい鶏肉について、仕入量、仕込み後の可食量、販売数、廃棄を1週間記録します。期限切れより仕込み過多が多ければ、仕入先変更ではなく曜日別の仕込み量を先に直します。
この例で大切なのは、最初から大規模なシステム導入や全面変更をしていない点です。対象を絞り、変更前の数字を残しておけば、結果が良くなかった場合も元へ戻せます。店の業態や客層によって結果は変わるため、他店の成功例をそのまま当てはめず、自店の数字で判断します。
よくある失敗と避け方
改善策そのものが間違っていなくても、確認する順番や比較条件がずれると成果が見えません。特に次の3点は、実施前に店内で共有しておきます。
仕入額だけで原価を判断する
まとめ買いをした月と在庫を使った月で数字がぶれます。月初・月末在庫を含む売上原価で比較します。
全メニューを一度に直す
変更の効果が分からなくなります。金額への影響が大きい食材や料理から順番に試します。
量を減らして終わる
満足度や再来店を落とせば逆効果です。廃棄、歩留まり、発注単位を先に確認します。
30日で進める実行手順
忙しい店でも止まらないように、1週間ごとに目的を一つだけ置きます。途中で問題が見つかった場合は次へ進むより、記録方法や店内ルールを先にそろえます。
- 1週目|現状を数える棚卸し、仕入、廃棄、販売数を同じ単位で記録します。
- 2週目|原因を一つ選ぶ金額が大きい廃棄、盛り付け差、過剰在庫のどれかに絞ります。
- 3週目|小さく変更する発注量やレシピを1〜3品だけ変え、現場の負担も記録します。
- 4週目|粗利益で判定する原価率、販売数、食べ残し、粗利益を変更前と比べます。
原価率だけでなく、廃棄額と1皿あたり粗利益を前月と比べる。売上や比率が良くても、接客品質、再来店、スタッフの作業負担が悪化している場合は、続け方を見直します。
よくある質問
原価率は何%なら適正ですか?
業態、客単価、家賃、人件費で適正値は変わります。他店の目安だけで決めず、自店の粗利益額と月ごとの推移を確認してください。
棚卸しは毎日必要ですか?
全品を毎日数える必要はありません。高価な品、廃棄が多い品、欠品すると困る品は短い間隔で、それ以外は月1回など重要度で分けます。
仕入先を変えるのが先ですか?
価格交渉の前に、使用量、歩留まり、廃棄、発注単位を確認します。同じ品質・条件で比較できる状態を作ってから判断します。
確認に使える情報
料金、規約、制度、検索サービスの仕様は変更されることがあります。実際に契約・申請・設定を変更する前に、必ず提供元の最新情報を確認してください。
最終確認:2026年7月19日
この記事は一般的な店舗運営の考え方をまとめたものです。会計、税務、法務、労務など個別判断が必要な内容は、税理士、弁護士、社会保険労務士、公的相談窓口等へご相談ください。編集方針を見る
