従業員の時給を上げる予定があり、レジや厨房設備の導入も考えている。その場合は、業務改善助成金を確認する価値があります。ただし、時給を上げれば必ず受け取れる制度ではありません。2026年度は9月1日に受付が始まり、9月8日に申請マニュアルとQ&Aが更新されました。前年の記事をそのまま当てはめず、今年の条件で確認しましょう。
1. 時給の引上げと、仕事を早くする設備投資がセット
この助成金は、人件費そのものを補填する制度ではありません。店内で最も低い賃金を所定額以上引き上げ、仕事にかかる時間を減らす設備などを導入したとき、その設備費等の一部を助成します。2026年度のコースは50円・70円・90円の引上げに対応しています。
例えば、会計後に売上や在庫を手で転記している店が、POSレジの導入でその作業を短くする計画を立てる場面です。厚生労働省もPOSによる在庫管理の短縮を対象経費の例に挙げています。ただし、同じ製品を買うだけで対象になるのではなく、自店の作業がどう変わるかを説明します。
従業員がおらず、店主一人で営業している場合は対象になりません。また、賃上げだけを行い設備投資等をしない場合や、仕事の効率が変わらない物品を購入する場合も、この制度の目的とは合いません。
2. まず確認するのは、今の時給と雇用保険
中小企業・小規模事業者であることに加え、助成金上の事業場内最低賃金が2026年度の地域別最低賃金未満であることなどが条件です。一方、申請時点で適用されている最低賃金は守っている必要があります。『現在の最低賃金を下回っているほど有利』という意味ではありません。解雇や賃金引下げなどの不交付事由も確認します。
2026年度は、基準になる労働者が雇入れ後6か月を経過し、申請書の提出日時点で雇用保険に加入している必要があります。雇用保険の加入期間そのものが6か月必要なわけではありません。短時間のアルバイトが多い店は、人数だけで判断せず、雇入れ日と加入状況を賃金台帳と一緒に確認してください。
また、『助成上限の計算に数える人数』と『賃金を上げる必要がある人』は同じとは限りません。引上げ後の店内最低賃金を就業規則等に定め、その額を下回る従業員の賃金も確認します。雇用保険に入っていない人は据え置いてよい、と自己判断しないでください。
3. 申請期限は全国一律の11月30日ではない
受付期間は2026年9月1日から、店の所在地に適用される地域別最低賃金の発効日前日、または2026年11月30日の、どちらか早い日までです。発効日とは、新しい最低賃金が実際に適用される日です。都道府県によって違うため、自店の所在地で調べます。予算により期間内に募集が終わる場合もあります。
賃上げにも別の期限があります。9月8日更新の申請マニュアルでは、申請書の提出後から地域別最低賃金の改定日前日までの実施が必要とされています。申請前の賃上げや、改定日以降の賃上げを、後から今回の計画に含めることはできません。
日付だけの想定例として、新しい最低賃金の発効日が10月1日なら、申請期限は9月30日、賃上げも申請後から9月30日までに行う必要があります。これは特定の都道府県の発効日を示す例ではありません。給与の締日と時給変更の適用日が違う場合も、労働局へ確認してから計画を決めます。
4. 賃上げの時期と、設備を発注できる時期を分ける
設備投資は交付決定後に進めます。申請書を送っただけで『もう買ってよい』とはなりません。見積もりの相談は先にできますが、契約・発注へ進む前に、交付決定通知と労働局の案内を確認してください。賃上げについては前節の期間があるため、設備と同じ日まで待てるとは限りません。
使える可能性がある例は、従業員と時給の要件を確認し、申請後に所定の賃上げを行い、交付決定後に計画したPOSレジを導入する店です。反対に、『先週レジを買ったので、今日から助成金を探す』という場合、その購入を今回の対象にすることはできません。
急に機器が故障し、営業のためにすぐ買い替えなければならない場合もあります。その支出まで後から助成されるとは考えず、通常購入として負担できるかを判断します。申請に合わせて見積書や発注書の日付を変えることはできません。
5. 助成額より先に、増える給与と立替資金を計算する
受け取る額は、認められた設備費等に助成率を掛けた額と、コース・人数等に応じた上限額のうち低い方です。引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら助成率4/5、1,050円以上なら3/4です。広告にある最大額が、そのまま自店の受給額になるわけではありません。
仮に助成対象経費80万円、適用される助成率3/4、上限40万円という条件なら、80万円×3/4=60万円ではなく、上限の40万円までになります。これは計算方法の例で、店の該当コースや経費を認定するものではありません。見積もりのうち対象外の項目があれば、別途負担します。
給与は翌月以降も増えます。例えば時給を50円上げる対象時間が毎月合計400時間なら、基本の給与だけで月2万円、12か月で24万円の増加です。保険料や割増賃金等は別に確認します。設備代の支払いと助成金の入金も別の日なので、先に支払う資金を残しておきます。
6. 相談に持っていくものと、導入後の仕事
相談先は店舗所在地を管轄する労働局の雇用環境・均等部(室)です。従業員ごとの雇入れ日、雇用保険、時給、今後の賃上げ予定と、導入したい設備の見積もりを用意すると話が進みます。買う機器が未定なら、いま時間がかかっている作業から説明してください。
実施後には報告と支給申請が必要です。通常の事業完了期限は交付決定年度の1月31日ですが、賃上げにはそれより早い期限がある点に注意してください。納品・支払い・賃上げを終えただけでなく、必要な報告まで予定表に入れます。個別の適否や日程は、最新の要綱と労働局の回答で確認します。
参考情報
料金、規約、制度、検索サービスの仕様は変更されることがあります。実際に契約・申請・設定を変更する前に、必ず提供元の最新情報を確認してください。
- 厚生労働省:業務改善助成金(2026年9月12日確認)
- 厚生労働省:2026年度リーフレット・対象条件と助成率
- 厚生労働省:申請マニュアル(2026年9月8日更新)
- 厚生労働省:Q&A(2026年9月8日更新)
記事更新:2026年9月12日
この記事は一般的な店舗運営の考え方をまとめたものです。会計、税務、法務、労務など個別判断が必要な内容は、税理士、弁護士、社会保険労務士、公的相談窓口等へご相談ください。編集方針を見る
