飲食店開業で予定が崩れやすいのは、物件、融資、営業許可、工事を別々に進めたときです。物件を契約したのに融資が決まらない、工事後に設備不足が分かる、といった手戻りを防ぐには、開業日から逆算して同時に確認します。
必要な許可や施設基準、融資条件、補助金の対象経費は、地域と計画によって異なります。契約・発注の前に、管轄の保健所、金融機関、制度事務局へ確認してください。
最初に決める4つの数字
店名や内装より先に、次の数字を仮置きします。数字は後から直して構いませんが、何も決めずに物件を見ると、家賃や席数を判断できません。
たとえば客単価3,000円、1日35人、月26日営業なら月商の仮置きは273万円です。この売上で家賃、人件費、材料費、返済を払えるかを確認します。必要売上は 飲食店の損益分岐点計算 で試算できます。
飲食店開業までの時系列
開業までの期間は物件と工事内容によって変わります。下表は、融資や工事を伴う小規模店を想定した目安です。
| 時期 | 主な作業 | この時点で決めること |
|---|---|---|
| 12〜9か月前 | 業態、顧客、商品、商圏の整理 | 客単価、席数、営業時間、自己資金 |
| 9〜6か月前 | 事業計画、資金計画、物件探し、融資相談 | 家賃上限、必要資金、借入希望額 |
| 6〜4か月前 | 物件候補の設備確認、保健所への事前相談、見積取得 | 物件を契約できる条件、工事範囲 |
| 4〜2か月前 | 融資申込、物件契約、設計・工事、仕入先選定 | メニュー、原価、厨房動線、発注先 |
| 2〜1か月前 | 営業許可の準備、採用、予約・会計・店舗情報の整備 | 店内ルール、シフト、予約条件 |
| 開店前1か月 | 営業テスト、写真撮影、地図・サイト公開、近隣案内 | 提供時間、会計、清掃、緊急時対応 |
| 開店後90日 | 週次の資金繰り、原価、客数、廃棄の確認 | 続ける施策と止める施策 |
開業資金と運転資金を分ける
開業資金は、保証金、内外装、厨房機器、什器、開業広告など、店を開けるまでに使うお金です。運転資金は、開業後の仕入れ、人件費、家賃、返済など、売上が安定するまで店を続けるためのお金です。
見積書を取る項目
- 物件取得費と保証金
- 設計、内装、電気、ガス、給排水、排気工事
- 厨房機器、家具、食器、レジ
- 採用、研修、制服、初回仕入れ
- 開業告知、写真、店舗サイト
- 開業後の家賃、人件費、仕入れ、返済、生活費
補助金は後払いが多く、採択も保証されません。開業資金の中心に置かず、使える場合に投資の一部を補うものと考えます。制度の例は 飲食店が使える補助金・助成金 で確認できます。
物件契約前に確認すること
安い物件でも、必要な電気・ガス・給排水・排気が足りなければ追加工事が増えます。居抜きでも、設備が使えるとは限りません。営業許可の見込みと工事費を確認してから契約を判断します。
家賃だけで決めない
共益費、保証料、更新料、指定業者、営業時間や看板の制限まで確認します。
設備容量を確認する
電気、ガス、給排水、グリストラップ、排気経路、防火設備を工事会社と確認します。
図面を持って保健所へ相談する
契約や工事の前に、予定する業態と厨房図面を管轄の保健所へ持参し、施設基準を確認します。
営業許可と衛生管理を工事前から確認する
飲食店営業には営業許可が必要です。食品衛生法に基づく施設基準の運用や申請手順は、営業する地域の保健所が案内しています。提供する商品によっては、飲食店営業以外の許可・届出が関係する場合もあります。
また、食品等事業者にはHACCPに沿った衛生管理が制度化されています。難しい仕組みを新しく作るのではなく、自治体や業界団体の手引きを使い、衛生管理計画、実施記録、見直しの方法を店内で決めます。
保健所へ確認する内容
- 予定する営業内容に必要な許可・届出
- 厨房区画、手洗い、シンク、給湯、保管設備
- 申請書類、検査日、開店可能になる時期
- 食品衛生責任者の要件と講習
- HACCPに沿った衛生管理の記録方法
開店前1か月は、実際の営業を通して確認する
設備が動くだけでは営業準備完了ではありません。予約受付から仕込み、提供、会計、片付けまでを、実際の人数と時間で通します。
- 予約を1件受けてみる電話、予約サイト、台帳で日時・人数・アレルギー情報が同じ場所に残るか確認します。
- 主力メニューを続けて作る1品だけでなく、同時注文が入った場合の調理時間と提供順を測ります。
- 会計から締め作業まで行う現金、カード、QR決済、取消、返金、レジ締めを担当者が処理できるか確認します。
- 店舗情報を公開する住所、営業時間、メニュー、価格、予約方法を公式サイトとGoogleビジネスプロフィールでそろえます。
デリバリーやケータリングを行う場合は、Googleビジネスプロフィールのサービス提供地域も営業実態に合わせて設定します。
開店後90日は、売上以外の数字も毎週見る
開業直後は広告や知人来店で売上が大きく動きます。売上だけで成功・失敗を決めず、現金、客数、原価、廃棄、人件費を同じ曜日区分で比較します。
支払日ごとの残高は 無料の13週間資金繰り表 で確認できます。
飲食店開業でよくある失敗
内装へ資金を使いすぎる
開業後の家賃、人件費、仕入れ、返済に使う現金が残らず、売上が安定する前に資金不足になります。
補助金の入金を開業資金に入れる
不採択や入金時期のずれで計画が崩れます。補助金がなくても開業できる資金計画を先に作ります。
営業開始後に集客を始める
地図、サイト、予約ページの準備が遅れると、店を知った人が営業時間や価格を確認できません。
売上目標の根拠がない
席数や営業時間で実現できない客数を置くと、返済と固定費の計画も成り立ちません。
飲食店開業でよくある質問
飲食店の開業準備は何か月前から始めればよいですか?
業態と物件の状況によりますが、資金計画や融資を含めるなら6〜12か月前から始めると予定を組みやすくなります。居抜き物件でも、許可、工事、採用、仕入先の準備があるため、契約後すぐ開店できるとは限りません。
物件を先に契約してから融資を申し込むべきですか?
家賃が発生してから融資結果を待つと資金を消耗します。候補物件を探しながら、金融機関へ相談し、契約条件や融資に必要な見積書を確認してください。契約前には保健所と工事会社にも相談します。
開業前の内装や厨房機器に補助金は使えますか?
創業・空き店舗支援などで対象になる場合があります。ただし交付決定前の契約や発注が対象外になる制度が多く、開業日に間に合わないこともあります。補助金を前提にせず、自己資金と融資を中心に資金計画を作ります。
営業許可は工事が終わってから相談すればよいですか?
工事後に設備不足が分かると手戻りになります。厨房の区画、手洗い、給排水などの施設基準は自治体へ確認し、図面段階で管轄の保健所へ相談してください。
開業後の運転資金はいくら必要ですか?
一律ではありません。家賃、人件費、仕入れ、返済、生活費など、毎月現金で出ていく金額を出し、売上が計画を下回る期間も支払えるように準備します。日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックでは、半年程度の赤字補てん資金を検討するよう案内しています。
確認に使える公式情報
最終確認:2026年8月30日。許可申請の詳細は、営業予定地を管轄する保健所へ確認してください。
